大人のハッピーセット vol.6 〜あの赤いスープのワンタンは…〜
「神田屋」の酎ハイ&ピーマンポテトサラダ&青唐辛子の卵炒め / 今週の「大人のハッピーセット」
「神田屋」の酎ハイ&ピーマンポテトサラダ&青唐辛子の卵炒め
「神田屋」は、居酒屋「天狗」などで有名な、株式会社テンアライドが運営する「大衆スタンド」がコンセプトの酒場。最近どんどん店舗数が増えているので、その人気はかなりのものと思われる。
実はその元祖とも言える「立呑み 神田屋 神田駅前店」がオープンした直後にお店を取材をしたことがあって、その時もお得さに驚いたものだったけど、昨今の酒場文化を研究し、さらなる進化を続ける姿勢には恐れ入る他なく、個人的にすっかり大ファンになってしまった。とにかく、ちょっとした空き時間にちょい飲みするのに、こんなにちょうどいい店もなかなかない。
「大衆スタンド神田屋 池袋西口店」
メニューを見れば一目瞭然。酒場ファンならばにやりとしてしまうような、幅広い世代、シチュエーション対応のラインナップが素晴らしすぎる。
この日は次の予定までの30分弱、スケジュール帳なんかを確認しながら、つまり喫茶店感覚で利用したかったので、本当に軽く。まずはアイスコーヒーがわりの「酎ハイ」(税込み209円)を頼んでおいて、つまみはどうしようかな。
「ピーマンポテトサラダ」(176円)
先述の神田店オープン当時からあった名物メニュー。生ピーマンにポテトサラダが詰めてあるという見た目重視のおもしろ料理かと思いきや、マヨネーズ味しっかり、ソーセージたっぷりの、いかにも酒のつまみ向きな味つけのポテサラが、ほんのりと苦いシャキシャキピーマンの食感と相まって、はっきり言ってかなりうまい。
「青唐辛子の卵炒め」(319円)
たっぷりの青唐辛子が入った、シンプルな醤油味ベースのとろとろ玉子焼き。いいすねぇ、この、途中ちょっとがつがつ食べ続けるのがつらくなってくるくらいの、容赦ない青唐辛子の量!
それにしても、神田屋ではいつもちょい飲みばかりなので、そのうち腰を落ち着けてがっつりと飲んでみたいな。シメメニューにも魅力的なものがいっぱいだし。
あの赤いスープのワンタンは… / 今週のコラム ※今週は最後まで無料です
池袋西口の北側一帯が自然発生的な中華街化しており、そのエリアの本場の人たちがやっている店の、お客に日本人がぜんぜんいなく、日本語すら通じるのかも怪しい雰囲気が、まるで海外旅行へ来たような気分を味わえ、昔から好きだった。
ところが近年はだいぶ事情が変わってきていて、わざわざここを目指してやってくる人も多く、だんだんと観光地化してきているようだ。特に、かつては日本人がふらりと入るような場所ではなかった中華スーパー「友誼商店(ゆうぎしょくふ)」と、併設のフードコート「友誼食府(ゆうぎしょくふ)」は、TVをはじめとしたメディアで多く紹介されたこともあり、いつ行っても席の空きを探すのが大変なほどの大にぎわい。そのビルの2階、かつては中国書専門の書店だった場所にも、書店併設という不思議な業態のフードコート「食府書院」ができ、続いて立川にも友誼食府の支店ができたそうだ。
そんな流れを受けてだろう。昨年、駅から5分ほど歩いた場所に、また新たな中華フードコート「沸騰小吃城(ふっとうしゃおちーちぇん)」がオープン。フロアが広々としていて、席もたっぷり。界隈のフードコート系の店のなかではいちばんだらっと過ごせることもあり、個人的には最近、ここが気に入っている。
広い店内には、上海、広東、湖南、湖北、雲南、四川、重慶などなど、中国各地の料理をそれぞれ出すブースが、まるで屋台のように並んでいる。しかも、わざわざ毎回キャッシュオン会計するのではなく、すべてスマホで一括注文、最終的にレジでお会計をして帰るだけというのも気楽でいい。
先日も、とある編集者さんに打ち合わせ場所の希望を聞かれ、喫茶店よりものびのびと話せそうで、ここを指定させてもらった。
一応打ち合わせであるからして、まずはふたりとも「烏龍茶」を頼む。それから、最低限ひとり1品くらいは注文をということで、ねぎ入りの平べったいお焼きのような「葱油餅」、焼き小籠包「生煎包」なども。
「葱油餅」(280円)
「生煎包」(480円)
で、ウーロン茶を飲みつつ、これらをつまみつつ、いたってまじめに(仕事がら内容はまったくまじめではないんだけれども、それでも一応真剣に)、今後の方向性などについてのあれこれを話す。
と、書いていて気がついたんだけど、この時やっていたことって、つまりは「飲茶」じゃないか。
僕は酒飲みなので、美味しい点心を前に酒を飲まないなんて考えられなかったんだけど、ナチュラルにやっていたんだな。飲茶を。でまた、それがなかなか良かった。喫茶店でお互いコーヒーを前にし、しかめっ面で話し合うより、だいぶリラックスできた気がする。飲茶ミーティング、いいな。次回は飲茶の専門店で打ち合わせというのもありかもしれない。
それはそうと、1時間くらいでその日の課題に対するアイデアは大体出つくし、そのままなし崩し的に、軽い打ち上げに突入しようということになった。いよっ! 待ってました! と、生ビールを注文。おつまみメニューを検討しながら待つ。
ところが、5分待っても10分待ってもビールが出てこない。どうしたんだろう? と思い、ドリンクサーバーのあるほうに目をやると、なにやら3人ほどの店員さんが、すったもんだしている。「プシュー……」と、やる気のない音とともに、ビールジョッキに泡だけが1/3ほど注がれ、それを捨て、またスイッチを入れると「プシュー……」。サーバーの故障なのか、それともビールの枯渇なのか。やがてどこからか、スーツを来たお偉いさんみたいな男性までやって来て、そのすったもんだが加熱している。
トラブルを発生させているのは、どう考えても僕の注文だよな。気まずい。そして、酒であれば別に、別のドリンクでもなんら問題はない。そこで、なるべく店員さんと目が合うようにそちらを気にしていると、やがてひとりの女性店員さんと目が合い、こちらに向かってきてくれた。
僕が聞く。
「あれって、ここのビールですよね?」
すると通常、日本人の居酒屋店員さんならば、もっともっと神妙な顔つきで、「お客様、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません……」という対応をしそうなところ、彼女は弾けるような笑顔でこう言った。
「すいません。ビール、出ません!」
あぁ、癒される。このおおらかさに。だから好きなんだよな、ここが。そこで注文を瓶の「青島ビール」に変更してもらい、ついでに、聞いてみたいことがあったので質問。
「前にここで、真っ赤なスープの辛いワンタンを頼んだことがあるんですけど、見つからなくて。どこかにありますかね?」
そう。あれは数ヶ月前のこと。ここに来た時に何気なく頼んだ、もうメニュー名を忘れてしまったんだけど、真っ赤なスープの辛いワンタン。あれがちょっとびっくりするくらい美味しかったんだよな。ぜひまた食べたい。と、ずっと思っていた。すると店員さんが、スマホを指差しながら言う。
「ワンタンは、コレですね」
ところがそのワンタンのスープは、写真で見るかぎりものすごくクリアな色をしている。
「あ〜、もっとこう、真っ赤なスープのワンタンが、前にあった気がして」
「ワンタンはコレ。ラー油で辛くもできますよ!」
「そうなんですね〜……」
「そのボタンを押して、決定で注文してください!」
「あ、はい、じゃあ」
こう言う場合は流れに身を任せてしまうほうがおもしろい。やがて運ばれてきたワンタンは、確かに赤くて辛そうではあるけれど、記憶にあるものとはどうも違う。そこで、運んできてくれた、さっきとは別の店員さんに聞いてみる。
「このワンタンって、ふだんは赤いスープじゃないんですか?」
「ハイ、ぜんぜん!」
「なんらかのワンタンスープの、ラー油仕立て」(値段忘れ)
食べてみると、肉の旨味たっぷりのワンタンに、滋味深いスープ。そこにラー油の刺激が加わり、ものすごく美味しい! ただ、これじゃない。これじゃないけど、美味しい!
で、けっきょく、あの赤いワンタンスープって、本当にあったのだろうか? 僕の記憶のなかだけにある幻なのだろうか?
猫型配膳ロボットがまったく動かず、下げられた食器置き場としてしか機能していないのがまたいい
編集さんが頼んだ豆乳スープのお皿がミッフィー柄なのも最高
とにかくまぁ、そんなイレギュラーな出来事も込みで楽しいのがこの店、そしてこのエリアの魅力なのだ。なんだかんだ満足して帰り、それでも気になったので、前回行った時の写真が残っていないかフォルダを探してみた。
するとやはり、写真が残っている!
「あの赤いスープのワンタン」
これこれ! やっぱり赤さがぜんぜん違う! 真っ赤なスープに染まった青梗菜も美味しそうだ。
で、けっきょくこれは、なんていうメニューだったんだろう? 沸騰小吃城のメニューにまだあるのだろうか? また食べられる日は、やってくるんだろうか?
あぁ、街で飲むのって本当に楽しいな……。
今回の内容は以上です。来月からは、
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