大人のハッピーセット vol.5 〜無人島に持っていきたい一杯〜
「松屋」の瓶ビールと「彩り野菜煮込みごろごろチキンカレー」 / 今週の「大人のハッピーセット」
「松屋」の瓶ビールと「彩り野菜煮込みごろごろチキンカレー」
僕が愛してやまなかった松屋の「オリジナルカレー」がレギュラーから降格し「創業ビーフカレー」に変更になったのが2019年末。ところが今年の5月、限定メニューとして大人気だった「ごろごろ煮込みチキンカレー」のレギュラー入りが決定し、それにともなってふたたびオリジナルカレーが復活したことは、記憶に新しい。
そこには、「ごろごろ煮込みチキンカレーに合うのは、創業ビーフではなくオリジナルのカレーソースであるから」という理由があったそうだ。
そして現在、2022年9月。松屋では、「彩り野菜の煮込みカレー」なるメニューが、期間限定で提供されている。で、なんとそのバリエーションに、あるのだ! ごろごろチキンとの組み合わせが!
ということは、ごろごろチキンに合わせ、創業ビーフの提供をやめるまでの決断をした松屋が、「合う」と判断したということだろう。ごろごろチキンと、彩り野菜の煮込みカレーが。これは、食べておかないわけにはいかない!
と、あわてて松屋に飛びこみ、ごはんを半分にしてもらって、瓶ビール(「HAPPY SUMMER」なるフェア開催中で、100円引きの390円)とともに注文した。
「彩り野菜煮込みごろごろチキンカレー」(850円)
松屋のサイトによると、彩り野菜の煮込みカレーは「赤ピーマン、黄色と緑色のズッキーニが入った、トマトベースの南欧風の煮込みカレー」で、「1皿で1日に必要とされる野菜摂取量の半分が摂れる逸品」だそう。
実際に食べてみると、なるほどなるほど。トマトの酸味が爽やかで、とてもうまいカレーだ。むしろカレーというより、「野菜のスパイシートマト煮込み」とでもいうような料理に感じなくもない。ラタトゥイユとかにも近いような。だけどもちろん、そんな料理がごろごろチキンに合わない道理がない。結論としては、めっちゃうまい!
今後も、松屋のカレーシーンから目が離せない。
無人島に持っていきたい一杯 / 今週のコラム ※今週は最後まで無料です
定期的に記事を書かせてもらているWEBサイト、デイリーポータルZ編集部から、「はげます会」という有料会員限定のコンテンツ向けに、「無人島には持って行かない、大切にしまっておく自慢の品」というテーマで、コラム執筆の依頼をいただいた。
「無人島に持っていきたい〇〇」というテーマの記事はよく見かけるが、さすがは予想外の視点にはっとさせられることの多い、デイリーポータルZ。原稿は、大好きだったけど閉店してしまった酒場などから譲り受けた、実際にお店で使われていた品々を、僕が勝手に「街の形見」と名づけ、それについて書いた。だって、実際に居酒屋で使われていたことに個人的な思い入れのあるだけのお皿やグラスなんて、無人島に持っていってもしょうがないものの筆頭だろう。
では逆に、いや、逆にじゃないんだった、純粋に、「無人島になにかひとつだけ持っていけるとしたら?」と考えてみる。するとこれが、定番の質問ながら、なかなか難しい。
まず、大前提として、「島にはなにもなく、遭難状態である」と考えていいんだよな? となると思いつくのは、具体的に使えるアイテムだ。
たとえば「サバイバルナイフ」。が、僕にサバイバル経験がないのに、それがあったところでどうする? 魚を捌くのに便利? じゃあその魚、どうやってとるの? そんなスキルもないぞ。ということは、本当に必要なのは「釣り竿」ということになるか。いやいや、釣りのスキルもなかった。しかもその釣り竿に、針と系はついてる? それは別と考えないとずるくない? まぁ百歩譲って、「釣り具一式」までは良しとしよう。だけどさすがに、エサまでは、百歩譲ってもらえないだろう。じゃあどうする? 土を掘ってミミズでも探す? いや無理無理! 絶対さわれない! そもそも、土を素手で掘るのかおれは? じゃあ本当に必要なのはスコップ? ……なんて考えていくと、けっきょくなにがあったって、自分の能力ではうまく活用などできっこないのだ。
考えかたを変えて、お気に入りの「レコード」や「文庫本」というのはどうだろう? う〜ん、まず、レコードは聴けない。ポータブルプレイヤーまではこれまた、百歩の範囲外になるだろう。万が一譲ってもらったとして、そのセットがあっても電源がない。無用の長物だ。
文庫本は読める。けど、読むかなぁ、その状況で。とにかく、運良く湧き水を見つけ、飲料水だけは確保できた。そして、なんだかよくわからないけれど食べられそうな木の身、それから、浅瀬で小さなあわびみたいな貝類は見つけ、しばらくはそれで飢えをしのぐことができそうだ。具体的に想像してみればみるほど、そんな状況で、読むかなぁ、文庫本。もう、な〜んにもしたくないんじゃないだろうか。暑い日中はとにかく木陰で寝て、体力を温存しておきたいんじゃないだろうか。
待てよ、そもそも、着ている服は持ちものには入らないのだろうか?
……などと考えれば考えるほど、僕の正解は絞られてくる。お察しのとおり「酒」だ。そういう状況でしたいことってもはや、酒を飲んでの現実逃避しかないんじゃないだろうか。
しかも、「キンキンのビール」や「缶チューハイ」が1本あったって、あっという間に飲み終わってしまって虚しいだけだ。つまり正解は……あくまで僕にとっての正解は、銘柄はなんでもいいから「4Lのペットボトル焼酎」ということになる。それが結論だ。
よく晴れた空の下、白浜のビーチと、その先にどこまでも続く水平線を眺めながら、僕は木陰に横になっている。なにもする気は起きない。ただ、酒に寄り添っていてもらいたい。ボトルのキャップをキュッと開け、こぼさないように慎重に慎重に、そのキャップに焼酎を少量注ぐ。少し渋いけれども食えないことはない、どんぐりのような木の実をぽりぽりとかじりながら、大切に大切に、焼酎を飲む。ちびちびペースだから酔いもゆっくりだけど、夕方くらいにはいい気持ちになってくるだろうから、そのまま寝てしまう。
そんなふうに数週間過ごしていると、やがて焼酎は半分くらいに減ってしまう。そうしたらボトルに、湧き水をたぷたぷに足してくる。甲類焼酎の天然水水割りだ。はっきり言って、めちゃうまい。これもまた、大切に大切に飲む。
それでもくり返していれば、やがて中身は限りなく水に近づく。ここに漂着して約半年。なんとか薄い水割りだと自分に思いこませてやってきたが、もう限界だ。焼酎は、水になってしまった。
そろそろか……。僕は意を決し、その中身をすべて、ドボドボと海へ注いでしまう。それから、残る力をふりしぼり、キャップを固く固く締める。そして、その空ボトルを浮き輪がわりに、海へと泳ぎ出すのだ。
運が良ければ、そして酒の神のご加護があれば、どこかの有人島にたどり着けるかもしれない。
今回の内容は以上です。来月からは、
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