大人のハッピーセット vol.16 〜勝浦朝市の雑煮の思い出と勝浦タンタンメン〜

(1)今週幸せを感じたお酒とつまみの組み合わせ【大人のハッピーセット】と、(2)今週のコラム【勝浦朝市の雑煮の思い出と勝浦タンタンメン〜】の二本立てです。
パリッコ 2022.12.11
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石神井大鳥神社酉の市「三好屋」の「炭焼だんご」と「駒ヶ岳エール生」 / 今週の「大人のハッピーセット」

石神井大鳥神社酉の市「三好屋」の「炭焼だんご」と「駒ヶ岳エール生」

石神井大鳥神社酉の市「三好屋」の「炭焼だんご」と「駒ヶ岳エール生」

 年末に欠かせない行事のひとつ、「酉の市」。

 地元石神井公園にある「石神井大鳥神社」でも毎年行われ、ここしばらくはコロナの影響で規模を縮小したりもしていたけど、今年は久しぶりににぎやかな雰囲気が戻ってきたようだ。とはいえ、小さな神社なので、もともとがかなりこぢんまりとしているんだけど。

 ライター業が徐々に本格的になりだした5、6年前から、ここで毎年、小さな熊手を買うことが恒例となった。最初の3年くらいはいちばん小さいやつ、そこからは思いきって2番目のものに乗り換え、以降は現状維持が続いている。とても、毎年熊手を大きくしていくような余裕は、今はない……。

 酉の市は「一の酉」から「三の酉」までがあり、今年は11月4日、16日、28日の3日間だった。たいていは一か二の酉に、昼間から家族で出かけていって、ついでに外食か買い物をして帰るというのが近年のパターン。ところが今年は予定が合わず、一と二の酉に行くことができなかった。三の酉だけは決して行き忘れないようにと、カレンダーに予定を書き込んだ。

 ところが28日の夜、僕はいつもどおり、家でぼーっと夕食を食べていた。昼間、あわあわと仕事に追われていると、夕方以降はどうしても注意力が散漫になる。そこにきておつかれさまのビールを飲んでしまえば、もはや起きているのの寝ているのの中間くらいの状態といってもいい。

 カチャ、カチャ……もぐ、もぐ……ごくり……。しかしやはり、わずかに絶対忘れられないという意識が残ってのだろう。食事中、僕は突然すくっと立ち上がって叫んだ。

「やば、今日酉の市!」 

「?」という顔の娘の横で、妻が「あ、そうだったね。急いで行ってくれば!」と言ってくれ、僕は食べかけの夕食もそのままに、駅前の大鳥神社へと向かった。

 よく考えると、我が家の夕食時間は早く、まだ夜の7時くらいだ。食べてから向かったってぜんぜん間に合う。が、この時焦っていた。万が一にも熊手を新調できなかったら、来年、失業してしまう……と。

 もちろん、熊手は無事に買えた。そこでひと安心し、参道に並ぶ屋台を眺めながら歩いていると、「三好屋」というだんごの屋台から、やたらといい香りが漂ってくる。みたらしとかいそべとかの何種類かを並べて売っているのではなくて、シンプルな醤油味のだんご一本でやっている感じがまたそそる。そういえばまだ、夕食の途中だったんだよな。あ、いいこと思いついた。このだんごを買って、近くにあるなじみの酒屋「伊勢屋鈴木商店」の、店頭角打ちスペースで食べさせてもらおう! もちろん、お酒を買って一杯やりながら。

 熊手が手に入ってしまえばもうこわいものはない。急にのんきなモードになり、商店街をふらふらと歩く。

 伊勢屋に着いて女将さんにご挨拶。ここは嬉しいことに、店内にある酒の他、常に内容の入れ変わる生ビールも店頭で飲める。今はなにがあるか聞いてみると、「南信州ビールの夏季限定『駒ヶ岳エール』を、あえて今の時期まで寝かせておいたもの」とのこと。そうそう、そういうおもしろいことをやりがちなんだよな〜、ここの女将さんは。

 さっそくお願いし、あらためて、今日1日おつかれさまとごくり。おぉ、夏らしく爽やかな香りなんだけど、少し寝かせている間に生まれたのであろう、どっしりとした深み、甘みを強く感じる。って、先に言われてなかったらそんなこと考えずに飲むんだろうけど、いいのいいの、こういうのは気分だから。とにかく、最高にうまい!

 だんごもつまませてもらおうと開けると、「あ、それ三好屋さんのおだんごですか? 美味しいよね〜。私もさっきいただいたの」と女将さん。確かに、醤油を塗って炭火で焼かれただんごからはたまらなくいい香りがする。ぱくりとひと口食べると、適度に歯ごたえのある昔ながらのだんごという感じで、醤油の焼けた香ばしさが口に広がる。すかさずビールをぐい。っふぅ〜……。

 だんご屋の屋号は「三好屋」で、店頭にはかなり古いサイン色紙も飾ってあったりしたから、名物店なのだろう。「だんごの三好」というチェーンがあるけど、関係あったりするんだろうか。

 なんてしばらく飲んでいたら、同じく熊手を買った帰りの先輩ライター、本橋隆司さんが、これまたふらりとやって来た。なかなかの偶然だと思うが、こんなこと日常茶飯事なのが石神井という街なのだ。そして、僕とまったく同じコースなのが笑う。さすが先輩で、熊手の大きさは僕とは段違いだったけど。

 楽しくて、思わず長く話しこみすぎてしまった。そろそろ帰ろう。なんだかんだ、年の瀬らしいいい夜だったな。

 来年も、せめて同じ大きさの熊手が買えますように。

 ※今回の記事、「今週のハッピーセット」と言いつつ、11/28のできごとですみません。記録しておきかったもので。

勝浦朝市の雑煮の思い出と勝浦タンタンメン / 今週のコラム

「いしい」の「勝浦タンタンメン」(800円)と「瓶ビール」(700円)

「いしい」の「勝浦タンタンメン」(800円)と「瓶ビール」(700円)

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